2 序章・闇~プロローグ・ダークサイド~

これは、全国一で一番地味といわれている、栃木県市貝町(いちかいまち)を狙おうとするもう一つの始まりのお話。

静寂の暗闇の中から、どこからともなく呼び声が聞こえる・・・
「オヤカタサマ。オヤカタサマ。ソロソロ、オメザメノトキデスヨ」
「・・・・・。」

 

「オヤカタサマ!オヤカタサマッ!!」

「・・・・・・・・・・・・。」

一方の呼びかけに対し、一方は応える様子はない。

 

「オヤカタサマ!オヤカタサマッ!!オ・ヤ・カ・タ・サマァ~!!(怒 」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

怒りにも似た呼びかけが暗闇を駆け抜ける・・・・が、やはり、応える様子はない。

 

「アァ、カレコレナンビャクネンコウシテイルノダロウ。はぁ・・・」 呼びかける者から、失望が混じった、ため息がもれる。

 

「カツテ、ソレハソレハ、キョウダイ デ キョウリョクな力をもち、地上を支配せんとしていた、我々の親方様(おやかたさま)は、数百年前の戦いから眠りについたまま、未だお目覚めになろうとしない・・・一族の野望は潰(つい)えてしまったのだろうか・・・一族の復興もまた夢まぼろしか・・・・。これもかつての霊獣の力の影響なのか・・・(悔」

 

しばらくの沈黙の後、うなだれていたその者は、ギュっと拳をにぎりしめ立ち上がった。

 

「そうだ!親方様の目覚めを待っているだけではいけない!我々一族の祈願を成就するのためにも、まずは、私だけでも地上に出て、親方様の目覚めをお迎えできる準備を整えねば!」

 

「しかし、私の力はまだまだ微力だ。この時代の都を手中に収めることは不可能だろう。何か名案はないものか・・・う~む。そうだ!まず、あまり知られていない町を手中に収め、そこから水面下で勢力を拡大していこう!・・・(略)・・・・よし!ここに決めた。まっていろよ“市貝町”~っ!」

 

その者は、静寂の暗闇から“市貝町”へ飛びたった。

唐突に地上支配の拠点として白羽の矢が立ってしまった、サシバの里「市貝町」の行く末は如何に! そして、親方様の正体とは・・・

つづく